楽器 箏・三弦十七弦

箏について (琴と箏)

 「こと」という楽器の漢字には、2種類のものがあります。「こと」は、古くは弦楽器すべてを表す日本語で、漢字では「琴」の文字が用いられます。けれども「琴」は「キン」とも読み、平安時代にさかんに行われた七弦の楽器をさす場合があります。これは「ことじ」を使わない楽器です。それに対して、普通に「おこと」として知られている楽器は「箏」と書き、その音楽のことを「箏曲(そうきょく)」といいます。「箏」の字の方が常用漢字に含まれていないため、ふたつの文字は混同されていることが少なくありません。ここでは、楽器をさす場合は「箏」の字を、「ことじ」「こといと」「ことづめ」などの付属品をさすときには「琴柱」「琴糸」「琴爪」などと「琴」の文字を使うことにしています。

箏曲のおこり

いま私たちが弾いている箏は、遠く奈良時代に中国(唐)から雅楽が輸入された時、その中の楽器のひとつとして日本にもたらされたものです。中世になって箏だけを伴奏とした音楽が現れましたが、17世紀に八橋検校(やつはしけんぎょう)(1614-85)が、ほぼ現在のかたちの箏曲を完成させ、「近世箏曲の祖」と呼ばれています。江戸時代には、主に盲人音楽家たちによって行われていた箏曲は、新しい楽器である三味線音楽とも結びついてたいへん発展しました。関西では生田検校(いくたけんぎょう)が生田流を、後に江戸において山田検校が山田流をおこし現在にまで伝えられています。

箏の構造と演奏

箏は桐の木で作った中空横長の箱状の胴に、十三本の弦(絹またはテトロン)を張ってあります。弦の下に柱(象牙またはプラスチックまたは木製)を置き、その位置によって音の高さを合わせます(「調子」といいます)。奏者は、自分の前に横に置いた楽器の右端に座り、右手の親指、人さし指、中指に琴爪をはめて演奏します。最も基本的に使われる「平調子(ひらぢょうし)」(一の弦からミ・ラ・シ・ド・ミ・ファ・ラ・シ・ド・ミ・ファ・ラ・シ)は伝統的な五音音階(ミ・ファ・ラ・シ・ド)を用いていて、「あっ、日本の音!」と感じられる美しい響きがあります。
 

三弦について

「日本の伝統音楽」といわれる数多くのジャンルの中で、最もよく使われている楽器は三味線です。 私ども生田流箏曲の中で学ぶのは、中棹(ちゅうざお)の地歌(ぢうた)三味線です(特に「三弦」と呼びます)。
 永禄年間(1158-69)に琉球から「三線(さんしん)」という楽器が堺に伝わり、それが改造されて三味線が生まれたと言われています。その後、江戸時代に三味線はまたたく間に流行し、たいへん多くのジャンルに分かれて発展しました。特に劇場音楽として重用され、近世の日本音楽の主役となりました。
 構造は、両面に皮を張った胴と、細長い棹から成り、その名のとおり太さの異なる三本の糸が張られています。胴の上で糸の下に駒を置いて浮かし、右手に持つバチで演奏します。

材質 胴 ― 花梨・樫など
棹 ― 紅木・紫檀・花梨など
皮 ― 猫・犬(人造皮もある)
糸 ― 絹・テトロン・ナイロン
バチ ― 象牙・べっ甲(バチ先部分)・にぎり部分は合成樹脂(プラスチック、アクリルなど)も使用
駒 ― べっ甲・水牛の角・象牙など(裏側に重りとして鉛・金・銀を仕込む)  

演奏方法は、胴を右ひざにのせ、左手の親指と人さし指の間に棹を支え、弦を指先でおさえて音程を決めます(おさえる場所をツボといいます)。そして、右手にバチを持ち、バチ先の角を糸にあてて音を出します。
三味線はたった三本の弦でありながら、広範囲な音程を出すことができ、とてもインパクトのある楽器です。 なお、文楽(ぶんらく)や津軽三味線は太棹(ふとざお)、歌舞伎の舞台などでみる長唄などは細棹(ほそざお)を用います。

十七弦について

 合奏曲の低音部を受け持つ箏として、1921(大正10)年に宮城道雄が考案した楽器です。普通の箏と同じような形態ですが、全体的に幅、長さ、厚み があり、十七本の弦を張ります。弦の太さも全体的に太く、よく用いられる調弦は一の弦から十七の弦までC(は)~E(1点ホ)と七音音階に調弦されることが多いのですが、箏同様、柱を置く位置によっていろいろと音高を変えることができます。奏法は箏と同じです。合奏曲の低音部を受け持つほか、独奏曲も数多くあり、洋楽器のチェロに似た魅力があります。

 


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